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#Message#
\>朝の支度を終え、カーテンの向こうが白み出す頃。\<\!
\>ようやく寝支度を始めだす同居人におはようと
\>おやすみを告げる。\<\!\>低く唸って手の平を振るその顔は
\>相変わらず青褪めている。
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#Message#
\>薄暗いリビングでテレビ前に張り付く姿を
\>見なくなって久しく、\<\!\>多少は健康になったかと思えば
\>尚更幽霊じみてきたのだから手の付けようがない。
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#Message#
\>シンクは眠る前と同じく空のままで、また何も
\>口にしていないのだ。\<\!\>私たちの成り立ちからすれば
\>彼女の方が『らしい』生き方をしているが、
\>せっかく日向で傷まない体の持ち腐れな気もする。
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#Message#
\>朝食は綺麗な水と日差しで充分。\<\!
\>海を越え届いたばかりの花瓶を忘れず
\>バスケットに入れて、庭へ。
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#Message#
\>ホワイトハウス腰部に展開された空中庭園、
\>観光用のレンガの舗装を横目に、木々のアーチを
\>抜ければそこが私の庭だ。
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#Message#
\>白木の柵にバスケットを掛け、鋏を手に
\>今日の花を探す。\<\!\>朝露の重みに負けず、花曇の下でも
\>しゃんと背を伸ばした一等美しい花がいい。
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#Message#
\>背筋に刃を滑らせ、ちょきん。\<\!\>
\>それ以上の工程は必要ない。
\>すぐに出番が来る。
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#Message#
\>テレポーターの作動音。遅れて視界が開ける。\<\!
\>基地一豪奢な部屋の中心で、あの方はいつも通り
\>私の到着を待ち構えていた。
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#Message#
\>小洒落た大理石のサイドテーブルに肘をつき、
\>傍らには芳醇な薫りのぶどう酒。\<\!
\>それが目覚めの一杯か寝酒かは一切見当がつかない。
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#Message#
\>\C[8]「おはようございます、支配者様」
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#Message#
\>\C[9]「おはよ。いつも悪いね」
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#Message#
\>あのラベルを先輩のワインセラーで見かけた気が
\>するな、と淡い記憶を手繰りつつ、
\>昨日の花瓶を下げていく。正規の手段で譲り受けた
\>ものであればいいのだが。
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#Message#
\>花の鮮度は昨日と変わらない。どうしてか
\>この人の部屋は植物が長持ちする。\<\!
\>バイソンの部屋側の植物が枯れやすい現象の
\>逆なんだろうか？
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#Message#
\>花は趣味で置かせてもらっているものなので、
\>毎日取り替えることにしている。\<\!
\>下げたものも自室や会議室の彩りになって無駄がない。
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#Message#
\>花瓶は玄関横に一つ、バルコニーそばに二つと、
\>寝室に一つ。\<\!\>最後にリビング。\<\!
\>新しい物を出すのは最も目にする場所がいい。
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#Message#
\>新しい花瓶を出せばあの方はいつも
\>気が付いてくれる。
\>だから、これもお気に召すことだろう。
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#Message#
\>\C[9]「水妖百合の意匠に独特の構造色──\<\!
\>　エクスピアギヤマンじゃないか！」
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#Message#
\>肩越しに飛び込んできた感嘆の声に
\>内心ガッツポーズ。舶来で取り寄せた甲斐もある。
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#Message#
\>精霊の恵み豊かなXP国湾岸地帯でのみ作られる、
\>エクスピア王宮御用達の代物だ。
\>土産物屋に並ぶ色ガラスとは違って
\>本物はほとんど輸出されない。
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#Message#
\>こういうのを喜びそうな人はもう一人いるが、
\>砕いて魔法の研究に使われるよりは
\>この方が花瓶も本望だろう。
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#Message#
\>\C[9]「高かったろうに……」
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#Message#
\>\C[8]「それはまあ、会長の伝手でどうにか」
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#Message#
\>エルフとのコネは作っておくものだ。
\>それでも一遠征分の報酬が軽く飛ぶ
\>高い買い物だったが、たまには悪くない。
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#Message#
\>\C[9]「なんだ。君の目利きだと思ったんだけどなー」
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#Message#
\>\C[8]「私は庶民ですよ」
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#Message#
\>買い被りすぎである。
\>私に品の良し悪しは分からないし、
\>価格と希少さで決めるが山だ。
\>それが贋作でも区別がつかないだろう。
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#Message#
\>その素直さが君の美徳なんだよ、とでも
\>
\>
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#Message#
\>逸品には相応の花を。
\>少し早めに咲かせた紫色の\C[9]カランセ\C[0]の花。
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#Message#
\>とっておきの一輪を目に入るように取り出せば、
\>あの方はいつの間にか背後に立っていた。\<\!
\>目を細めて笑うその視線はずっと私の手元にある。
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#Message#
\>\C[9]「貸してごらん」
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#Message#
\>花に顔を寄せ、\<\!\>すう、と一呼吸。
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#Message#
\>\C[9]「うん。今日も良い香りだ」
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#Message#
\>手に取った瞬間から散り出していた一輪は
\>瞬く間に朽ち果ててしまう。
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#Message#
\>子孫も残せず、土にも還れず。
\>ただ戯れに摘み取られる様は何かに似ている。\<\!
\>残り滓をハンカチにくるんで仕舞うのを、
\>あの方はくすくすと笑って見ていた。
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#Message#
\>花も人も等価値、生者と死者の境さえもない。\<\!
\>我が身可愛さに代わりを差し出す私も
\>とうに化け物なのだろう。
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#Message#
\>\C[9]「今はこれだけが無聊の慰めでね。\<\!
\>　……あ、三将軍には内緒ね」
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#Message#
\>\C[8]「つまみ食いは今始まった話じゃないですよね？」
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#Message#
\>\C[9]「あはは」
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#Message#
\>目の前で仕事を奪われた花瓶は物言わず、
\>物言えずにそこにある。
\>物の役割なんて、それだけ。
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