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#Message#
「ザックさん、回診の時間です。」
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#Message#
「先生……」\!
私の声に言葉を返したのは彼ではなく、
彼の婚約者だった。
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#Message#
「ザックは、どうなんですか。\!
　もう目を覚まさないんですか。\!私っ」
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#Message#
「落ち着いてください。\!
　そんなに葱を持ってきて頂いても、
　彼の治療には役立ちません」
##


#Message#
「\s[2]…こういう時、\.一体何から話せばいいのでしょうね。\!
　特殊かつ複雑なケースで……\!尚且つ、残念ながら、
　貴方にとって喜ばしいことが何一つ言えないのです」
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#Message#
「\s[2]彼の病気は、精神の病気です。\!
　時にあなた……\.亜里沙さんは
　アスペルガー症候群という知的障害をご存知ですか」
##


#Message#
「\s[2]アスぺ……？
##


#Message#
「\s[2]限定された分野以外への関心や交流を苦手とし、
　次第に、自分の世界へと閉じ込もってゆく障害です」
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#Message#
「\s[2]社会でのコミュニケーション不能になってしまう、
　という症状が多く見られる障害ですが、
　彼の症例は特別で、深刻です」
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#Message#
「\s[2]彼の憧れ。\!劣等感。\!楽しかった過去。\!
　今までに感じたあらゆること」
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#Message#
「\s[2]全てが彼の思うように形を変え、
　複雑な精神世界を構築している」
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#Message#
「\s[2]いうなれば夢のようなものです」
##


#Message#
「\s[2]夢？」
##


#Message#
「\s[2]こうなりたい、という願望や希望。\!
　睡眠時に見られる体感現象。\!
　その両方の意味で、とらえて頂いて結構です」
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#Message#
「\s[2]眠っている彼の中では、
　彼の望む世界が広がっています」
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#Message#
「\s[2]主人公である彼にとって、都合のよすぎる物語。
\.　彼を現実から引き離すヒロイン。
\.  彼に倒されるために現れる憎い敵」
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#Message#
「\s[2]物語で彼は敵を倒し、
　仲間たちに英雄として受け入れられます」
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#Message#
「\s[2]……」
##


#Message#
「\s[2]亜里沙さん、彼はたぶん、
　もう自分から起きることは無いと思います」
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#Message#
「\s[2]私は彼がつぶやく寝言から、断片的に物語の筋書きを
　拾ってきました」
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#Message#
「\s[2]それは難しいことでは無かったです。\!
　彼の物語は、終わればまた始まる」
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#Message#
「\s[2]彼は何度でも同じ夢を見るんです。\!
　ずっと、抜け出せずにいるんですよ。\.
　一本道の短い迷路を、滑稽なほどにさまよって」
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#Message#
「\s[2]そんな……」
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#Message#
「\s[2]……ですが……いや。\!
　亜里沙さん、ひとまず、\.彼の夢の世界の物語を
　聞いてあげてくれませんか」
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#Message#
\>　\<夢の世界で彼は「異世界から招かれた戦士」として
\>　　　　　　　　　 \<登場します。
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#Message#
\>　　　　　 \<彼の戦いのパートナーとして、
\>　　　　\<ドラゴナスという翼竜が登場します。\!
\>          \<これは恐らく、彼に眠る人格……\.
\>          \<海馬としての自意識でしょう。
##


#Message#
\>　　　　　　　　    \<彼は多分、
\> \<ヒーローというものに憧れていたのではないですか。
##


#Message#
\>　　　　　 　 \<民衆に受け入れられる、
\>     \<ヒーローになりたかったのではないですか。
##


#Message#
\>　　\<彼の中では、現実で……あなたたちの世界で、
彼が倒すべきだった敵と決着をつける場面もあります。
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#Message#
\>　　　　\<多分彼は、その英雄になれない事を
\>           \<気に病んでいるのでしょうね。
\!\>    \<……私に、彼の本当の真意はわかりませんが。
##


#Message#
\>　　　　　  \<ですが、私なりにひとつ……
\>　　　　 \<この説を裏付ける考えがあります。
##


#Message#
\>　　　　　　　\<夢の世界での彼の姿……
\.\>  \<それは、基本的にはこのベッドで眠る彼と同じです。
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#Message#
\>　　　\<違う点は……そう、ジャケットの色です。
##


#Message#
\>　\<どうしてジャケットの色だけが違うのでしょうね。
\!\>　　　　　　\<私なりに考えてみましたが。
\>     \<……\.これもまた、彼の理想像の欠片なのでは
\>                 \<ないでしょうか。
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#Message#
\>　\<彼の理想像は、英雄という漠然としたものでなく、
\>　　　  \<もっと具体的な人物だったんですよ。
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#Message#
\>　　　　　  \<彼が抱いた青のイメージは、
\>　　　　　 \<勇者アレックスだったんです。
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#Message#
\>　　　　 \<アレックスのようになりたかった。
\>　　　　     \<\!清々しい英雄譚の節々に、
\>　　　　   \<彼のそんな思いが感じられます。
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#Message#
\>　　　　    \<ですが……\.その憧れこそが、
\>　\<全ての禍根だったと、わたしは信じて止みません。
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#Message#
\>　　　　\<物語の最後で彼が戦う宿命の相手……
\>              \<\!滅びの力を持つアレス。
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#Message#
\>      \<彼は、\.たぶん……\."アレックス″です……。
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#Message#
どう足掻いても及ばない英雄へのあこがれは、\.いつしか
\>　\<倒すべき敵への憎しみに形を変えてしまったのだと
\>　　　　　　　　   \<私は思います。
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#Message#
彼を倒すという事は、彼の望む現実の極限なんですよ。
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#Message#
\>          \<彼を葬り去る、究極の奥義……。
\!「我が剣舞にて安らかなる眠りを、"レクイエム″」
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#Message#
\>     \<安らかに、夢の世界で眠っていたかったのは
\>　　　　　　\<きっと彼自身なんです。
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#Message#
\>　\<レクイエムは、自分自身に捧げた鎮魂歌だったので
\>                    \<しょうね。
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#Message#
\>　　\<思うに、アレスとはアレックスであると同時に
\>    \<彼本人の投影でもあったのではないでしょうか。
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#Message#
\>　 \<彼自身、この非生産な幻想の世界に気づいていて
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#Message#
\>　 \<その迷いを断ち切るという意味も、このシーンに
\>            \<含まれていたのだと思います。
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#Message#
\>　 \<ともあれ、これで夢の物語は大団円を迎えます。\!
 彼は、英雄として……\.世界に受け入れられるのです。
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#Message#
\>　 \<私がこの物語をすべて理解したのは、１０回ほど
\>　　　　　 \<聞いてからだったでしょうか。
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#Message#
「それじゃあ」
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#Message#
「彼は、自分の幸せな夢の世界に閉じこもっていて」
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#Message#
「二度と出てこないということですか……？」
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#Message#
「……」
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#Message#

(\s[2]また夢が始まった。\!
白い部屋で見る退屈な夢……。)
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#Message#

(\s[2]この夢の中では、決まって一人の女性が、
俺にすがって泣いているんだ)
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#Message#

(\s[2]……\.憂鬱で、退屈な夢だ。\!
それとも、あの世界が夢なのだろうか。)
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#Message#

\s[3](……\.さっきまで近くにあったものが、\.\.
\s[5]また遠くにぼやけていった)
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#Message#
「クレイス先生！\!
　いま、彼が」
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#Message#
「そうでしょう。\!
　先ほどのアレスの話の時にも、
　彼が本当は気づいているのだと触れましたね」
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#Message#
「わかっているんです。\!
　自分はこの夢の世界では、本当に幸せにはなれない」
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#Message#
\>　　　　\<願望の顕現というぎこちない世界で、
\>    \<節々にほころびが現れないはずはありません。
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#Message#
\>　　　　 　  \<彼も分かっているんです。
\>　　　　　　\<救いを、求めているんです。
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#Message#
アレスを倒した後に、物語に奇妙な変化があるんです。
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#Message#
\>　　　　　　 \<流れとして不自然なほどに、
\>          \<「帰る」という言葉が出てくる。
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#Message#
\>　　　　　　　 　\<そして、最後に。
\>    \<彼を元の世界に帰そうとする女神が現れます。
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#Message#
 彼がこの世界にとどまり続ければこの世界が壊れる。\!
そう言われ、彼は夢の世界を惜しみ別れを告げますが…
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#Message#
女神の言った事はただのウソだったと、撤回されます。\!
\>　　　　　　\<……何のためにそんな嘘を？
\>                 \<不自然でしょう？                
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#Message#
「これが、ほころびなんです。\!
　彼も自分の世界に戻らなくてはいけないことは
　わかっている。
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#Message#
「それでも、夢の世界の誘惑には勝てないんです。
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#Message#
「ただひとつ、彼が夢から醒める望みがあるとすれば…
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#Message#
「それは亜里沙さん、あなたです」
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#Message#
「夢の世界で、彼の現実での親しい友人は
　一人も登場しません」
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#Message#
「アルベルトさんに、ミーアさん……\!
　バーンズさんという方も、
　面会に来られましたね」
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#Message#
「彼は、夢の世界で徹底的に、
　現実とのつながりを断っているんです」
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#Message#
「……ですが、その中でただ一人……\!
　女神という登場人物は、恐らくあなたです」　
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#Message#
「この世界で、女神だけが元の世界への帰還を
　告げに来る」
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#Message#
「あなただけが、彼を現実に呼び覚ますことが
　できるのだと、わたしは思います」
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#Message#
「私も、睡眠中に語りかけることによって
　″恍惚なる闇″と名をかえて彼の世界に
　参加することができましたが……」
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#Message#
「彼に、私のこの言葉は届きませんでした」
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#Message#
「彼は、一本道の短い迷路を、
　ずっと彷徨い続けているんです」
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#Message#
「誰かが横穴を開けない限り、
　目覚めることはない」
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#Message#
「時間の許す限り、彼に話しかけてあげてください。
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#Message#
「……」
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#Message#
「では……
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#Message#
\s[3]「私が……」
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#Message#
\s[3]\>　　　　　　　　　　　　\<夢。
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#Message#
\s[3]\>　　　　　　　　　　 \<おれの夢。
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#Message#
\s[3]\>　　　　　\<勇者になるのが、俺の夢だった。
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#Message#
\s[3]\>　　　　　　　　  　　\<ならば。　　　　　　　　　
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#Message#
\>　　　　\<\s[3]勇者になる物語は……\.夢だったのか？　　　　　
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#Message#
\s[3]\>　　　　　　　　  　　 \<ああ。　　　　　　　　　
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#Message#
\s[3]\>　　　　　　　　  　　 \<俺は。　　　　　　　　　
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#Message#
\s[3]\>　　　　　　　　  　\<俺はどこに。　　　　　　　　　
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